情報漏洩が起きるたびに、利用者へパスワードの変更や注意が呼びかけられます。 しかし、それだけで本当に十分なのでしょうか。
AIが急速に進歩する今、情報を「漏らさない」ための対策とともに、 万が一漏洩しても被害を広げない仕組みについて考えてみたいと思います。
情報漏洩のニュースを見て思うこと
企業による個人情報の漏洩が報じられるたびに、少し疑問に感じることがあります。
企業が不正アクセスを受け、顧客の個人情報が流出する。 その後、企業は謝罪し、原因や再発防止策を発表します。
一方、私たち利用者には、次のような対策が呼びかけられます。
- パスワードを変更する
- 同じパスワードを使い回さない
- 不審なメールやSMSに注意する
もちろん、こうした対策はとても大切です。 自分の情報を守るために、個人でできる備えを続ける必要があります。
企業が個人情報を収集すること自体が悪いとは思いません。 商品やサービスの提供、契約、問い合わせ対応などのために、 必要となる情報もあります。
ただ、情報漏洩が発生するたびに、その後の対応や利用者側の対策ばかりが 注目されることに、どこか違和感を覚えます。
AIの進歩によって変わる社会
2020年、新型コロナウイルスの流行によって、 私たちの生活は大きく変わりました。
働き方や人との接し方、それまで当たり前だと思っていた日常が、 短い期間で大きく変化しました。
数年が経った今、当時を振り返ると、 社会の常識は決して変わらないものではないと感じます。
そして現在、AI(人工知能)が急速に進歩しています。 その変化を、かつての産業革命に例える人もいます。
AIは、文章や画像の作成、情報収集、業務の効率化など、 私たちの生活や仕事を便利にしてくれます。
その一方で、偽の文章や画像の作成、なりすまし、詐欺、 サイバー攻撃などに悪用される可能性もあります。
もちろん、AIは攻撃に使われるだけではありません。 不正な動きを検知したり、大量の通信や記録から異常を見つけたりするなど、 情報を守るためにも活用されています。
しかし、技術が進歩するほど、 攻撃する側と守る側の双方が高度化していくことも考えられます。
個人の対策だけでは防げないこともある
私たちがどれほど複雑なパスワードを設定していても、 情報を預けている企業やサービスから個人情報が流出してしまえば、 個人の努力だけですべてを防ぐことはできません。
だからといって、パスワードの管理や不審なメールへの注意が 無意味になるわけではありません。
大切なのは、個人でできることと、 企業や社会全体で考えなければならないことを 分けて考えることではないでしょうか。
パスワードの使い回しを避ける、多要素認証を利用する、 不審な連絡をすぐに信用しないなど、 日頃から基本的な対策を続けることが大切です。
必要以上の情報を持たず、保有する情報を適切に管理し、 万が一の事態が起きた場合にも被害を広げない仕組みが必要です。
「漏らさない」だけでなく「被害を広げない」
これからの情報セキュリティには、 「どうすれば情報漏洩を防げるか」という考え方だけでなく、 もう一つ重要な視点があると思います。
例えば、氏名や住所、電話番号などが知られたとしても、 それだけでは簡単に本人になりすませない仕組みも、その一つです。
必要な情報だけを収集し、 利用目的が終わった情報をいつまでも残さないことも大切です。
情報漏洩を完全にゼロにすることは、現実には簡単ではありません。 だからこそ、侵入を防ぐ対策だけでなく、 情報が漏れた後の影響を小さくする備えも必要になります。
情報とどう付き合うのかを考える時代へ
ITに携わる仕事をしている私自身も、 この問題に対する明確な答えを持っているわけではありません。
ただ、情報漏洩のニュースが繰り返される今だからこそ、 目の前の対策だけでなく、 もう少し根本的なところに目を向ける必要があるのではないかと思っています。
- 企業は、どのような情報を、何のために、いつまで保有するのか
- 利用者は、どのサービスに、どこまで自分の情報を預けるのか
- 漏洩しても、大きな被害につながらない仕組みをどう作るのか
情報セキュリティは、専門家や企業だけが考えるものではなく、 ITを利用するすべての人に関係する問題です。
技術が進歩する今だからこそ、情報をどう守るかだけでなく、 情報とどう付き合っていくのかを、 もう一度考える時期に来ているのかもしれません。

